4051の創作

小説頑張って終わらす

3話②

110号室。

そこは誰もいない筈の部屋である。

しかし、そこには白髪(はくはつ)の青年がいた。

私も驚きを隠せないが、彼はもっと驚いているようだった。

「…誰だ、キミは」

「……あーあ、ここに来てイキナリ見つかるなんて。やれやれだなぁって感じ」

彼はため息をつき、よこ横にふった。

なんなんだこいつは。ここの人間ではないのだが……

「あ、名乗ってなかったね。ボクは…ユメミ!!ユメミでいいよ。ちょっとワケアリで急だけどここに住むんだ!一応~君らと同じ、”エスピリト”、だよ」

「!!」

エスピリト。それはワタシ達がここにいる理由である。20歳になると…死ぬ、そういう病気なのだ。だから、来年になればワタシは……。

「そうだ、ボクがここにいることは誰にも言わないでね?ボクの力をもってすれば君なんて永遠の眠りにつかせることだってできる」

「わ、わかった。見なかったことにする」

…と、言うしかなかったw

「まあ…時期が来たら、また会おうね。それじゃ、よろしく~」

ワタシはユメミに見送られ、ドアを閉めた。

 

 

夜になり、ワタシは一人考え事をしていた。もちろん、さっきの白髪青年のことだ。

彼はいったい何者だろう。内部事情を知っているのだろうか?……わからない

「なあなあ、どうしてそんなに難しい顔してんだ?…う○こか?」

 「違うわ!!!!…ちょっと考え事だ」

突然声をかけてきたのは、ヒノ君だった。

これはキレても仕方ないと思う。

「てか、なんでお前と寝ないといけないんだよ!ほもか?!」

なぜその単語を知っている。

「仕方のないことなんだ。でもワタシはホモじゃないぞ」

ヒノ君は音楽プレイヤーを取り出した。

「おれ、音楽プレイヤー(これ)で寝るから、自分ので寝ていいよ……」

 最近彼は電子機器に入れるようになったのだ。使いこなすのがはやい。まばゆい光に包まれ吸い込まれていった。

トップ画面はアイコンが散在していて、中央にすでに夢の中のヒノ君がいた。

「アニメのキャラに3秒位で寝るやついたな」

ワタシも、寝るとしよう。一日でも多く、そしてあの人の為にも長く、生きなければ。

 

 

3話①

ー再び某院内

「またか!!」

「すみません…」

「これで何回目だとおもってるんだ!」

「ですが…」

「?」




医者からの今日の連絡。また一人誘拐された。対策として二人以上で寝るように人数分けをするようにとのこと。

ワタシはヒノ君とロタリーとかな?着せ替えして遊びたいな。………もちろん、ヒノ君でだ。似合いそうだし。

そんなことを考えながら、14階の階段のそばまで来ていた。

「…ん?この部屋…」

今は使われず、なぜか厳重に閉鎖されたはずのドアの奥に人の気配がした。

「どーしたんですか?リーダー。」

背後から突然話しかけてきたのは、ここの階に入院しているダイという男だ。能力の関係で、記憶は別々じゃないようだが二重人格なのだ。どう別なのかは髪色で判断する。今は…水色。純粋で優しいダイ(白ダイと読呼んでいる)だ。

「ああ、なんかこの奥から人の気配がして」

「あーそれはぼくも思いましたぁー(キリッ)」

ワタシの言葉を遮ったのは白ダイではなく、髪が紫色のウザくて泥棒するダイ(黒ダイと読んでいる)だった。話す内容で突然人格が変わるので少し面倒だ。…特に黒ダイだと。

「どーします~?扉ぶっ壊してみちゃいまスか~?」

控えめに言ってうざい。

「行くならリーダー一人の方がいいッスよね!ぼく鍵開けて帰るッス。」

「そうだな。頼む。」

そういうと黒ダイはニヤリとわらい、鍵を開けて去っていった。ワタシはそのドアのノブをゆっくりとひねった。





続く






2話③

「…!ロタリー!大丈夫か?!」

はっとしたおれは、あわててロタリーの元にかけより肩を叩いた。

「………んん…。」

どうやら意識を失っただけのようだ。

「でも、………」

今のはなんだったんだろうか。

「おい!なんか大きい音したけど…って、どうゆう状況?!」

思い切り扉を開いた音で振り向くとキョウだった。思い切り目を見開いていて、驚くのも無理ないと思った。


事情を説明すると、キョウは納得した顔をした。

「それなら仕方ないな。ロタリーには申し訳ないが…」

「仕方ないのか?」

おれが訪ねると、キョウはよくぞ聞いてくれたと言わんばかりにニヤリとしておれを指した。

「そうさ!キミの場合は静電気のようなものが走ってロタリーを気絶させた…。つまり電…いや、雷のエスピリトなのだ!」

「………はい?」

エスピリト、という聞いたことがない単語を耳にしてきょとんとした。キョウはそれも想定内のようで、そのまま語り始めた。

「エスピリトって言うのは、ヒノ君やロタリー、そしてワタシなどここにいる人間すべてが、生まれつきだったり突発的だったりしてなにかしら能力を持っていることの総称だ!」

「…って言っても漠然としてるよね…。ロタリーが起きてくれたらな…。」

キョウはやれやれと頭を掻いた。

「キョウも使えるんだろ?キョウのはどんなやつなの?」

「いや、ワタシのはワタシにしか効果ないから分かりにくい。」

おれが納得した顔をすると、キョウはすまんなと言った。

「ロタリーは、対象のモノの時間を止められるんだ。」

「へぇ~、キョウは?」

「秘密主義なんでね。」

そのあとも何度か尋ねたが答えてくれなかった。

とりあえず、おれの雷みたいに、何か特殊なチカラを持った集団というのはわかった。



続く





2話②

朝食後、ロタリーには食堂で会わなかったので、まっすぐ彼女の部屋に向かった。

「ロタリー、いるか?」

ノックをしてそう言ったが返事がない。土俵って取っ手を掴んで少し押すと、鍵が掛けられていないことがわかった。

「は、入るぞー…」

扉を開けて部屋に入るとロタリーの部屋は淡いピンクや黄色などかわいい感じになっていた。リビングにむかうと、ロタリーはベッドの上でジャージ姿のままうつぶせに寝ていた。…二度寝というやつだろう。

「おーい、起きろー。」

肩を軽く掴んで揺らすと、「うぅん…」とロタリーは唸った。

「ん…?…?!?!ヒノくぅん?!」

目を覚ましたロタリーは驚きのあまり飛び上がっていた。驚かすつもりはなかったので少し悲しかった。

「キョウが、おれに渡したいものがあるって言われたからロタリーのこと探してて…。」

「…あ、そうだった。コレコレ。これ以上髪の毛短くならないなら、邪魔だと思って。」

そう言って差し出してきたのは、茶色の髪の毛を縛るゴムだった。

「さんきゅーロタリー。助かった。」

感謝の気持ちを述べ、受けとるためにロタリーの手に触れた瞬間、パチリと静電気が起こった。

「いってぇ」

思わず手を離すと、おれの指先から電気が出ていてロタリーはしびれて気絶していた。

「……、え?」

おれはわけもわからず立ち尽くしていた。





続く









2話①

ー某院内

「…それで″患者″たちの様子は?」

「はい。皆さんとても元気で怪しんでいる様子はありません。ただ…。」

「ただ?」

「さっき、106号室で事件が…」



ここに来てから大分経ち、生活に慣れてきた。そんなおれは布団の中で微睡んでいた。

もう少しで二度寝しようとしたときに、けたたましくノックを鳴らしてくる人がいた。

「ヒノ君!起きてるか?!聞いたか?!」

声の主はキョウだった。なぜかすごく興奮したような声色だ。

「何をだよ。今まで寝てたのに、キョウのせいで目が覚めちゃったよ。」

おれはムスッとしながら扉を開けた。

「ストレートだなぁ…。まあ、それでだな。医者からのお知らせで、今日の明け方未明に14階の住人が誘拐された。動機や方法は不明。」

気のせいかもしれないが、あまりいい知らせではない内容を得意げに言ってるように聞こえた。

「そうなんだ。気を付けないとね。」

「そうだな。被害が増えるようなら、対策も打つと言っていたよ。」

おれはこれで話が終わったと思ったので閉めようとしたらキョウが「そうだ」と言って、扉を閉めようとするのを止めた。

「ロタリーがあとでキミに渡したいものがあるそうだ。忘れるなよ?」

そう言った途端、キョウはものすごい形相でおれを睨んでいて怖かったので無言で何度もうなずいた。

(これ以上のことを考えたら殺されそうだな…)

考えこんでいるとキョウが「またな」と言って自分の部屋に戻って行った。

「…。ごはん食べよう…」





続く



1話⑧

ロタリーの部屋の整理の手伝いを初めてだいぶ経って、終わるころにキョウは戻ってきた。

「おや、もう終わったのか。口論が長引いてな…。手伝えなくてごめんな。」

「ううん、いいの!ヒノ君が手伝ってくれたから!」

二人のやりとりは、仕事で遅くなった男と帰りを待っていた女みたいだなと思った。

「そうか。ヒノ君もありがとな。…話の内容が気になるんだろう?ヒノ君?」

キョウがニヤリと笑いながらこちらを見てきたので、おれは曖昧に笑い返した。

「まあ、大した話ではないが、どちらの身長が高いか競ってたぞ。」

「またその話してたの?!飽きないね~」

し、身長…?

「あと4センチなんだよ。絶対抜かしたくてさぁ。」

キョウの話はを聞いてなんだかおれはなんとも言えない悲しいような気持ちになった。

「…あれ?ヒノ君、泣いてる?」

「あーー悪い悪い。記憶あったときは気にしてたんだな。それ。大丈夫、伸びるさ!」

そう言ってロタリーはティッシュを差し出し、キョウはおれの頭を撫でた。悲しい気持ちを察してくれたのかなと思ったら温かい気持ちになった。

 

 どうなるかわからないけど、ヒノとしてこの不思議な生活が始まった。





一話完





どこかの部屋に、白髪の青年は佇んでいた。見つめる先には電源の入ったノートパソコンがある。

「…やっと、ゆっくり仕事ができる。誰かが入ってくるなんてほぼ無いと言っていたし、仮に入ってきた時の対策もしたけどね。

彼はため息をついてノートパソコンの前にある椅子に座った。



 

1話⑦

たどり着いたのは、さっきのマフィアっぽい部屋だった。まあ、15階に来た時点でわかったけども。恐怖と緊張で体が強ばってきた。でもおれよりロタリーのビビり様が尋常じゃないのが余計に入りたくなくさせていた。そんな心中を無視したノックの音が鳴り響いた。

「おーい入るぞー」

キョウは思い切り扉を開け、その勢いで扉と壁がぶつかりその音におれとロタリーは驚いてビクッとなった。開いた扉の向こうを見ると、青い髪の長髪でなぜかアイマスクをしたキョウと同じくらいの男が近づいて来た。

「よお、ブレイド。メシ持ってきたぜ。」

ブレイドと呼ばれた男はキョウを見ているのかはわからないが、なんだか嫌そうな顔をした。

「あ?匂いでわかったけど、またカツ丼かよ。たまには他のにしろよ。」

「他のがいいなら自分で取りに行きなよ。」

「面倒臭いからヤダ」

おれは呆然と二人のやり取りを見ていると、なんとなく視線が重なった気がした。

「キョウ、こいつ誰だ?」

ひぃ、怖い。じ、自己紹介しなきゃ‼

「は、ひゃい!おれ、ヒノです!!それ以外わかりません!」

「なんだそりゃ?!それ自己紹介って言わなくね?!」

そういわれても、返す言葉がありませんー!!

おれが困っていると、キョウが助け船を出してくれた。

「あーヒノ君は漫画とかでよくある”記憶喪失”ってやつなんだ」

「え?!マジ?!…なら仕方ないか。それよりやっぱアイマスクしてると眠くなるなー…」

そういってブレイドは大きな欠伸をした。二人のやり取りを見ているとあまりマフィアっぽくないとおもった。ふと、ブレイドの視線がロタリーへと移った。…気がした。

「お、ロタリーじゃん。いつも悪いな。…って、そんなカオすんなって。ここのやつらに何かしたことないだろ?」

ロタリーは顔を真っ青にしている。…この人は一体何をしたんだろう。

「それなら、アイマスクとって特訓の成果見せてみろよ。もう気絶もしないレベルなんだろう?」

キョウは試すような口調で言った。

「んー、まだ人には試したくないからやめとく。」

ブレイドは考えるそぶりをしてから断った。なんかあまりいい予感のしない能力な気がする。よくみたらアイマスクに”DEATH”(死)と書かれていた。なぜ今気が付いたのだろう。気づきたくなかった。

「そうだ。二人とも、そろそろ荷物が部屋に届いているはずだから、ヒノ君はロタリーの荷物運び手伝ってやってくれ。」

「お、おう…」

唐突に言われて、まともに返せなかった。

「キョウ君は…?」

ロタリーはおどおどとキョウに尋ねた。

「ワタシはまだこいつに用があってな。」

「…わかった。」

おれたちは、風のように部屋を立ち去った。扉を閉めたとき、かすかに「おい、カツ丼冷めてんじゃねェか!」と聞こえた気がする。

 

 

続く