1話④
部屋の内装を一言でいえば、ビジネスホテルみたいなかんじだ。壁紙は薄い茶色、ベッドは青色、机や服が入っているであろうタンスは明るい茶色だ(うまく言えないのが残念だ)。
「そういえば、自己紹介してなかったね。ワタシは、キョウ。″今日″じゃないよ」
辺りを見回していると、突然自己紹介をはじめていた。今日と発音が同じ、キョウという名前のようだ。
ふと、机の下の辺りを見ると鞄が置いてあった。何が入っているんだろうと気になって中を見ようとすると、キョウが「なあ、」と声をかけてきた。
「いつの間にか肩くらいの長さの金髪になっているけど。やっぱキミもこっち側だったんだな。」
「…はい?」
キョウはニコニコと嬉しそうに言った。…金髪?あり得ない。ここに来るまでは確かに茶色い髪で短髪だったはずだ。
「この部屋って鏡ある?」
「そこの部屋だよ。」
キョウが指を指した部屋は、洗面所だった。急いで鏡を見ると、確かに金髪で肩くらいの長さになっていた。付け足すと、毛先の方は茶色く残っていた。…でもさあ、
「わあああああぁえええええええええええ?!」
大声を発しながらおどいてしまった。
「確かに急に変わったらワタシもなるわ…」
キョウはやや同情していたが、やはりどこか嬉しそうだった。おれはそれを恨めしく見つめた。
「…あのさ、ハサミある?」
とりあえず、うっとおしい長さなので切ってしまいたかったのだ。キョウは少し考えるようなしぐさをして、
「あると思うけど、この感じだとすぐ伸びそうだよね。」
「そうか…。諦める。」
おれがしょげていると、キョウがドンマイと言わんばかりに肩をポンポンと叩いた。
「あ、もう少ししたら昼食の時間だ。時間になったら案内しにまたここに来るから、着替えとか部屋の整理とかしてなよ。」
「わかった。」
キョウがみた方を見ると、時計の針は11時ごろを指していた。そしてキョウを見ると、キョウは手を振って扉の外へ出ていったのだった。
続く