1話⑧
ロタリーの部屋の整理の手伝いを初めてだいぶ経って、終わるころにキョウは戻ってきた。
「おや、もう終わったのか。口論が長引いてな…。手伝えなくてごめんな。」
「ううん、いいの!ヒノ君が手伝ってくれたから!」
二人のやりとりは、仕事で遅くなった男と帰りを待っていた女みたいだなと思った。
「そうか。ヒノ君もありがとな。…話の内容が気になるんだろう?ヒノ君?」
キョウがニヤリと笑いながらこちらを見てきたので、おれは曖昧に笑い返した。
「まあ、大した話ではないが、どちらの身長が高いか競ってたぞ。」
「またその話してたの?!飽きないね~」
し、身長…?
「あと4センチなんだよ。絶対抜かしたくてさぁ。」
キョウの話はを聞いてなんだかおれはなんとも言えない悲しいような気持ちになった。
「…あれ?ヒノ君、泣いてる?」
「あーー悪い悪い。記憶あったときは気にしてたんだな。それ。大丈夫、伸びるさ!」
そう言ってロタリーはティッシュを差し出し、キョウはおれの頭を撫でた。悲しい気持ちを察してくれたのかなと思ったら温かい気持ちになった。
どうなるかわからないけど、ヒノとしてこの不思議な生活が始まった。
一話完
どこかの部屋に、白髪の青年は佇んでいた。見つめる先には電源の入ったノートパソコンがある。
「…やっと、ゆっくり仕事ができる。誰かが入ってくるなんてほぼ無いと言っていたし、仮に入ってきた時の対策もしたけどね。」
彼はため息をついてノートパソコンの前にある椅子に座った。