2話①
ー某院内
「…それで″患者″たちの様子は?」
「はい。皆さんとても元気で怪しんでいる様子はありません。ただ…。」
「ただ?」
「さっき、106号室で事件が…」
ここに来てから大分経ち、生活に慣れてきた。そんなおれは布団の中で微睡んでいた。
もう少しで二度寝しようとしたときに、けたたましくノックを鳴らしてくる人がいた。
「ヒノ君!起きてるか?!聞いたか?!」
声の主はキョウだった。なぜかすごく興奮したような声色だ。
「何をだよ。今まで寝てたのに、キョウのせいで目が覚めちゃったよ。」
おれはムスッとしながら扉を開けた。
「ストレートだなぁ…。まあ、それでだな。医者からのお知らせで、今日の明け方未明に14階の住人が誘拐された。動機や方法は不明。」
気のせいかもしれないが、あまりいい知らせではない内容を得意げに言ってるように聞こえた。
「そうなんだ。気を付けないとね。」
「そうだな。被害が増えるようなら、対策も打つと言っていたよ。」
おれはこれで話が終わったと思ったので閉めようとしたらキョウが「そうだ」と言って、扉を閉めようとするのを止めた。
「ロタリーがあとでキミに渡したいものがあるそうだ。忘れるなよ?」
そう言った途端、キョウはものすごい形相でおれを睨んでいて怖かったので無言で何度もうなずいた。
(これ以上のことを考えたら殺されそうだな…)
考えこんでいるとキョウが「またな」と言って自分の部屋に戻って行った。
「…。ごはん食べよう…」
続く